令和2年度活動方針

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活動方針

林経協では、持続可能で環境保全に配慮された森林の管理・経営を推進し、日本の森林・林業の発展・農山村の活性化に寄与することを目的として、森林政策等についての提言とそれを実現させるための運動、調査研究、経営講座の開催、国内外への調査研修、機関誌(林経協季報『杣径』)や書籍の発行などの活動を行っています。
例年、5月に開催される総会で次の活動目的に沿った事業計画を決定し、分科会や青年部会、婦人部会、流通・需要拡大部会などでの活動を行っています。
また、毎年3回開催される理事会でも活動状況を審議しています。

<活動目的及び実施事業>

 (1)  水源涵養、国土保全など環境保全機能を高める森林の管理・経営の推進
 (2)  持続的な林産物の生産機能を高める管理・経営の推進
 (3)  森林の自然生態系、生物多様性を維持する管理・経営の推進
 (4)  森林・林業を通じた農山村地域の活性化
 (5)  環境負荷の少ない循環資源である国産材の利用推進
 (6)  森林、林業、木材利用の普及啓発
 (7)  林業労働安全の確保と従事者の生活環境の向上
 (8)  森林育成、素材生産、木材加工流通、金融・税制等に関する調査研究
 (9)  上記各事業に関する研修会、機関紙の発行、関係図書の出版
(10) その他本協会の目的を達成するために必要な事業

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令和2年度事業計画

令和2年6月15日に開催した総会・理事会において、定款第3条(目的)及び第4条(事業)に基づき、令和2年度は主に以下の活動を行うことを決定。

1、令和2年度活動方針 (吉川重幹会長)

国産材価格の低迷・需要の減少・生産コストの上昇等により、林業が危機的状況に陥ってから久しいが、日本林業経営者協会は、「林業を活力ある産業として蘇らせ、もって国土の3分の2を占める森林を守り、地域を活性化させる」という課題を国民共通の目標にすべく活動してきた。具体的には、「無垢材の需要拡大による山元立木価格の上昇」並びに、「育林コスト・伐出コスト・再造林コストの低減」を図ることにより、継続可能な林業の実現を目指してきた。
昨年からは、「森林経営管理法」が施行されるとともに、森林環境税を財源とする「森林環境譲与税」の譲与も始まった。更には、総務省が地方公共団体金融機構の準備金2,300億円を活用して配分ペースを大幅に早める事を決定したため、本年度から配分額が倍増し、満額の600億円に達する時期も2033年度から2024年度に前倒しされることとなった。
また、建築業界では、オリンピック・パラリンピック関連施設に見られるように木造、或いは木質化を図った建物がブームとなっており、政財界においては、木材利用拡大を目指す団体が相次いで設立されており、林業界として追い風を受けていることは間違いない。
 
林業界を巡る状況においては、政府の地方創生・地域振興政策の推進役としての林業に関心が集まり、産業界を中心に「林業復活・地域創生を推進する国民会議」も発足した。
また、建築業界では、都市における非住宅木質建築がブームとなりつつあり、本年11月に竣工する新国立競技場も内外装共に見え掛かりの木材使用が訴求ポイントになっている。
国際的にも林業は、2015年に国連サミットで採択されたSDGs達成に寄与するものとして注目されており、追い風を受けていることは間違いない。
 
しかし、木材価格、特に山元立木価格は、ここ30年余り下がり続け、林業は全く採算が合わない状態が続いているのが現状である。ここ数年、伐採量は増加したものの、人工林伐採跡地に再造林できない地域が増加しつつあるのも事実である。林業を巡る経済環境がこのまま続けば、日本の私有人工林は伐採のみが進み、跡地は天然更新の名の下に放置され、荒廃の一途を辿ることが必定である。
まずは、この事実を政治・行政機関、更には広く国民に向けて発信していくことが重要である。その上で、地方創生・地域振興政策の推進役として林業を位置づけ直し、具体的な林業振興策を実現するべく務める事が、日本林業経営者協会の存在意義だと考える。
 
具体的な活動として、
1.林政に関する情報をいち早く入手し、会員に迅速に伝達すること
2.需要開発部会・輸出部会・優良材部会・バイオマス部会・低コスト部会・政策PR部会に於いて、それぞれのテーマに応じて調査研究すること
3.その情報に基づき、会員の為となる林政を求める提言やその実現のための運動をすること
4.毎月の定例会に講師を招き研修会を開催すること
5.林業視察研修旅行を開催すること
6.
機関誌「杣径」を発行すること
等を、今後とも国産材の需要拡大、引いては山元立木価格の上昇等による再生産可能な林業の実現を目指して行うものとする。
 
各部会については、林政や林業技術のみならず、国際情勢の変化、急速に進歩するIT技術等に関する最新の情報も収集しながら、それぞれ適切な具体的課題を取り上げ、調査・研究をすることとする。
また、会員の経営規模・地域的特性にも配慮した支援・提言や、相続や後継者問題等を含む継続的な林業経営の展望を開く為の課題解決に取り組んでいく。

2、部会活動方針

政策課題に関する部会は、次の6部会となっている。
① 需要開発部会(担当:片岡明人副会長)
② 輸出部会(担当:小貫裕司副会長)
③ 優良材部会(担当:田中善彦副会長)
④ バイオマス部会(担当:溝渕真一副会長)
⑤ 低コスト部会(担当:佐藤久一郎副会長)
⑥ 政策PR部会(担当:辻村百樹副会長)
 
① 需要開発部会 (片岡明人副会長)
まずは、話題提供で過去に当部会が実施した業態別の各事業体の説明から2-3年経過しているものが多いので、数年ぶりに大きく状況が変化して現在の状況、今後の見通しがどのように変化していくのかという点について、各業態(大型製材、合板、バイオマス発電所に燃料を入れている事業者など)の状況などを改めて話題提供をお願いしたいと考える。
また、新型コロナ問題で市況状況が激変している状況で、民有林側でも生産者単独で考えがちな素材生産と市場の需要のバランスの実態把握し価格をどう維持していくのか?を検討しなければならないが、一方の最大供給元である国有林がどのような動きをしているのか?(森林所有者である当会だけでは不十分かもしれないが)国有林の供給の実態と今後の見通しも知っておくべきと考えるので、方向性(政策)と実態(現場状況)の両面から国有林情報にも焦点を当てて意見交換もしたい。
併せて、引き続き、会員の皆様には月ごとにタイムリーな市況情報を届けるようにしたい。
 
② 輸出部会 (小貫裕司副会長)
ここ数年、原木・製材品共に輸出量が増加しており、特に原木は昨年、一昨年と100万㎥を超えたが、今年度は新型コロナ感染症の影響で輸出量の減少が予想される。
このような状況下、輸出量の安定化ならびに収益向上を目指し、
1) 中国向け輸出原木に関しては、軸組在来工法とその現場向けの設計・施工指針等のノウハウを織り込んだシステム販売によりスギ、ヒノキ、カラマツの構造材用途の輸出に取り組む一方、新たな輸出先の開拓、調査を進める。
2) 輸出木材に付加価値をつけるべく内外装材や家具材等の新たな商品の可能性を探るため情報収集や調査を行っていく。
3) なお視察については新型コロナ感染症の状況を踏まえ判断して行く。
 
③ 優良材部会 (田中善彦副会長)
林野庁との共同の勉強会の実施などを通じて、林業経営におけるA材生産の重要性についての理解がより深まりつつあると考えているが、未だ十分とは言えない状況である。引き続き、A材需要の拡大、とりわけ、「無垢KD材」の普及に向けて川下に向けた働きかけが重要である。
この観点からも、林野庁が進めている無垢材JAS構造材の利用拡大事業に積極的に協力していくことが重要である。
 
④ バイオマス部会 (溝渕真一副会長)
電力の固定買い取り制度の継続される中で小規模バイオマス発電が進められ燃料としての未利用材の需要はますます拡大していくと予想される。
価格が安定し需要量も確実な販売先を有することは、林業経営の安定という面では大きく貢献するものと考える。
ただし、地域によって需要の動向や買い取り価格に差があることも事実であり、その背景や価格について研究を実施したい。
 
⑤ 低コスト部会 (佐藤久一郎副会長)
本部会は非常に守備範囲が広く、再造林・育林・伐採・搬出等様々な段階での低コスト化が期待されている。
レーザー計測による森林資源情報の把握や境界の明確化、路網の効率的整備に向けた設計ソフトの開発、コンテナ苗を用いた一貫作業システム、エリートツリーや早生樹の活用等既に様々なアイディアが実現してきている。
また、ドローン荷役、林業用アシストスーツ、造林作業の自動化、自動伐倒作業車、自動集材機、自動走行フォワーダー等の実用化に向けた研究が進められている。林業の自動化・無人化は安全対策の面からも望ましく早期の実現を期待したい。海外事例なども参考に実用化の進展に合わせて部会で検討・研究していきたい。
 
⑥ 政策PR部会 (辻村百樹副会長)
コロナ禍は林業界においても、世界的な構造変化を起こす起爆となる可能性があり、林政情報も国内に留まらず、世界の情報も入手して会員へ適時伝達する。
また、林経協の提言等を立案するとともに、青年部会や婦人部会が取りまとめる提言等を含めて、マスコミ等の手段を講じて、森林・林業の振興が、国土や環境の保全、地方創生・地域振興さらには健康増進など、我が国の根幹形成に極めて重要かつ有効である事をPRして行く。

3、青年部会・婦人部会活動方針

これまで同様に一般会員にも参加を呼びかけて、両部会主催でのセミナーや研修視察等を実施する。

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