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丸太価格急落に対する要請

平成24年6月13日
(一社)日本林業経営者協会

丸太価格急落に対する要請
 

1. はじめに
『森林管理・環境保全直接支払い制度』や『森林整備加速化・林業再生事業』に基づく間伐作業が各地で進んでいます。

しかし、切り捨て間伐が助成対象から除外され、出材量に応じた補助となったことや需要拡大が進捗していないことから、丸太が市場で消化できない状況となっています。このため、丸太価格が急落し、かってない最低価格となるとともに、市場での原木受入の停止、合板等の加工産業での入荷制限などが顕在化してきており、補助金算定のための出材数量が確定できない可能性もでてきました。森林所有者は、これまでのなだらかな長期にわたる価格低落とは異質な、これまで経験したことのない状況に直面しております。

間伐の推進と国産材が生産拡大されることを歓迎していますが、需要確保と合いまったものでなければ、森林所有者の苦境は増大します。この傾向は梅雨時期以降に更に強まるものと見込まれます。この難局を打開するため、以下の緊急対策及び中・長期対策としての需要拡大及び消費税についての要望の実現をお願いいたします。

 

2、 要望事項
(1) 当面の緊急対策
① 山土場集積の間伐材に対する補助金
間伐の着実な推進のために、買受人ないし市場が引き取らない丸太は山土場に集積し、貯木保管しておくとともに、間伐出材量としての計量(例えば林地から出材がされていれば事業計画量の出材があったものと見なすなど)を行い、間伐補助金を支払うこととして講じていただきたい。これは需給状況の改善後に販売するか、バイオマス資源として活用を図る。
② 当面の生産量の縮小
中・長期的には国産材の生産拡大に向けた取組は極めて重要な課題であるが、当面はマーケットが消化できる生産とする必要があることから、伐採計画の先送りや緊急の生産縮小措置を講じることとし、国・公・私有林のこれに向けた取り組みをそれぞれの判断で行うこととし、この一環として民有林については、都道府県等に需要にも配慮した間伐の推進を要請していただきたい。
③ 25年度における補助制度の見直し
補助単価が出材量に見合って増額される現行制度を需給が均衡するまでの当分の間、市場原理に沿うものとして、切捨て間伐を認め、補助単価も一律とするようにしていただきたい。

(2) 来年度以降に向けた課題
① 木質バイオマス使用の早急な推進
循環資源である未利用間伐材等のバイオマスについて、再生可能エネルギー特措法に基づく、木質バイオマス発電の円滑かつ速やかな推進を図ることとして、低質な間伐材などを大量に消費する木質バイオマス発電施設設置への支援施策を徹底して講じていただきたい。
② 固定資産税 都市計画税の見直し
固定資産税 都市計画税(それぞれの標準税率は1.4%と0.3%)
現在新築木造は3年間、新築中高層耐火建築3F以上は5年間 1/2
これを新築木造について、10年間 1/2に改善する。
(参考)1000万円の住宅評価額の例では、

1000万円×1.7(1.4+0.3)=
17万円×1/2×7年(10-3年)=60万円の減税となる。
③ 住宅の長寿命化(200年住宅)促進税制
『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』に即し、平成20年度から良質な住宅を長く使うことによる地球環境への負荷の低減を図るとともに、建替えコストの削減による国民の住宅負担の軽減を図るため、長期耐用住宅の支援措置として、固定資産税は、木造戸建てが、5年間1/2であるのに対し、マンションは7年間1/2となっている。どちらも長期耐用住宅にはかわりが無いこと、木材は再生可能な環境貢献資材であることから、木造戸建てについては、マンションと同等以上の優遇措置を講じていただきたい。
④ 国産材住宅促進のための奨励措置
国産材を活用した住宅について、地球温暖化防止・国土保全等公益的寄与を踏まえて、購入者にエコポイントを付与していただきたい。
また、銀行等に対し、低利の住宅ローンの設定など国産材住宅を促進するための働きかけをしていただきたい。
(3) 立木・丸太にかかる消費税の負担軽減
ア. 木材は生活必需品であるとともに、再生可能な環境資源である。また、山村振興や森林整備を推進するため、木材の安定供給と利用促進を図る必要がある。
このため、消費税引き上げ前後に発生する駆け込み需要とその反動への対策、長期低落している国産材価格に消費税引き上げ分を価格に転嫁できない。
イ. 特に、育成林業では、以下の理由から購入者に転化して高く販売できていない。
① 国産材価格は長期低落している。需要拡大が林政の課題となっており、立木や丸太の価格に消費税を上乗せすることは至難の技である。
② 3ha以上の森林所有者の総数は、20万であるが、相対的に規模の大きい素材生産業者や製材業に一方的に価格を決められているのが実情である。
ウ. 林業では、長期間の育成を要する。投資と収穫のズレによって伐採年度に控除できる仕入額は殆ど無い。また、林業では育成費の多くを人件費が占める。特に、間伐の立木販売では消費税というより売上税の実態にある。
エ. 林業は地球温暖化防止・国土保全等公益的性格を有する事業であることも考慮いただきたい。

オ. 以上の対策として、以下の実現を要望する。
消費税法では軽減税率の導入や住宅取得への措置を検討するとしているが、仕入税額を転嫁できない立木・木材の実態を踏まえ、次のいずれかの制度を創設する。
① 消費税額の還付
② 軽減税率の適用

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