林経協の提言
●東日本大震災への林業の取組(提言)
●今後の森林管理・林業経営に向けた提言
(三井物産環境基金支援事業報告)
●丸太価格暴落に対する緊急アピール
●新しい森林・林業基本計画についての意見
「政策提言」地球環境時代の新しい林政のあり方
●「森林施業計画制度」運用に対する要望書
●地域材の活用に向けて
●「持続可能な森林の管理と経営」 推進のために(要望と提案)
●スギの需要拡大に関する政策提言
●森林整備地域活動支援交付金について (要望の再提出)
●森林整備地域活動支援交付金について (要望)
●温暖化ガス吸収源としての森林機能増進方策に関する政策提言
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国産材需要拡大に向け政策提言を提出

「国産材需要拡大分科会(古河久純座長)」
における検討及び1月30日開催ののシンポジウム「スギ集成材の可能性」を踏まえ、 以下の政策提言を取りまとめ、3月25日(月)林野庁に提出した。

 
平成14年3月25日
(社)日本林業経営者協会
会長 古河 久純

スギの需要拡大に関する政策提言

(社)日本林業経営者協会は、平成13年5月の総会以降において、
いくつかのプロジェクト(分科会)を立ち上げました。
それは「持続可能な森林の管理と経営」、「国産材需要拡大」、
「効率的な林業経営システム」等に関するものであり、
これら分科会の中間報告として、平成13年10月には、
「持続可能な森林の管理と経営分科会」から要望と政策提言を行っているところです。
 今回、国産材需要拡大分科会は、今後のわが国の林業・木材産業振興政策として、 スギ集成材事業の展開が不可欠という認識に基づいて、 スギ集成材需要拡大の方策についての政策提言を取りまとめました。
 以下その概要です。

「現状認識−スギの基本問題−」、
「突破口−スギ集成材事業の可能性−」、
「展望−スギ集成材事業の方向」の順で述べます。

 当協会としては、林野庁の施策の中で、スギ集成材事業に関連する支援策が強化され、速やかにこの事業が軌道に乗ることにより、国産材需要拡大の展望が開けることを期待していますので、よろしくご検討をお願いする次第です。

 なお、この分科会(座長 古河久純)では、スギ集成材に関心を有する当協会の会員と委嘱した外部の専門家や研究者等とで分科会を構成し、数回の検討会とシンポジウムを経て報告を取りまとめており、これについては、当協会の月刊誌である「林経協月報」の3月号に掲載していますので、参考にしていただければ幸甚です。

1 現状認識−スギの基本問題−

 わが国には、戦後の拡大造林によって造成された資源を中心に、 平成11年現在、面積で1,035万ha、蓄積で21億7千万立方メートルに 達する膨大な人工林が存在している。(林野庁『森林資源現況』から推計)このうちスギの占める割合は面積で44%、蓄積で57%程度であり、しかも、伐採可能な面積割合([齢級以上)は4割を占めており、スギ人工林は確実に主伐期へ入りつつある。したがって、 スギ人工林の有効利活用は、林業・木材産業の振興につながるだけでなく、森林所有者の多くが居住している山村経済の活性化にも寄与する可能性が極めて大きい。

 ところが、こうしたスギ人工林の存在にもかかわらず、スギの素材(丸太)生産量は1994年をピークに減少しているのが実状である。もし、このような状況が今後も続くとすれば、林業・木材産業の地盤沈下と 森林所有者の経営意欲の減退は免れえないし、ひいては人工林資源の劣化にもつながる危険性を有している。今まさに、スギ人工林を活用し、林業労働者、地場製材工場の減少に歯止めをかけなければならない時である。

 それでは、スギの素材生産量は何故減っているのか。その理由として次のことが考えられる。

(1)

長引く不況、金融危機などによって、国民の将来に対する不安感が増幅し、多くの消費者が住宅、特に木造住宅の大宗をなす持家の新築にきわめて消極的になっている。

こうした木造住宅需要の縮小に対して、外材、国産材を含めた製材品供給が過剰気味で推移しており、これがスギ製材価格、スギ素材価格、スギ立木価格下落の大きな要因になっている。

その結果、森林所有者の経営マインド(伐採性向)が冷却化し、素材生産量の減少を招いていると 考えられる。

(2)

スギ製材品価格に大きな影響を与える外材輸入の動向が、1990年代中葉を境として、それまでの米材(特に米ツガ製材品)から、北欧や東欧から輸入されるホワイトウッド(一部レッドウッドを含む、以下同じ)に変わっている。

スギと米ツガの競争時は、柱や母屋・桁などの構造材の未乾燥・ムク材 同士の競争であったが、平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の促 進等に関する法律」(「品確法」)による瑕疵担保責任により、住宅生産者側では構造材の未乾燥 ・ムク材は実質的に使用されなくなっているのに対して、ホワイトウッドは 板取りを基調とし完全人工乾燥処理した狂いのない製材加工品として日本市場へ参入しているという違いを生み出している。


このような外材輸入動向の変化に乗じて、ホワイトウッドが集成管柱の原料として日本国内で大量に消費されていることは周知のとおりである。こうしたホワイトウッドなどを原料とした集成管柱が、わが国の柱角市場でシェアを伸ばし、スギの需要が着実に減少している。 このことがスギの素材生産量の減少にも影響を与えている。

 この結果、特に、南九州や四国では、スギ人工林の皆伐跡地への再造林が行われずに放置されるケースが現れ始めているおり、持続可能な林業経営の展開にとって大きな不安材料となっている。

 以上が、1990年代後半に入って惹起しているスギの基本問題であると認識している。



2 突破口−スギ集成材事業の可能性−
 では、このような窮状をどのようにして打開すべきか。
それには、スギの需要拡大を実現することが最重要課題であると考える。

 ところで、ここ数年の林野庁のスギの需要拡大施策を見ると、スギ製材品(特に心持ち柱角)の人工乾燥処理技術の確立とその普及が中心的な課題になっているように思われる。

この施策そのものは、当協会としても時宜を得たものと大いに歓迎しているが、その一方で、残念ながらスギ心持ち柱角の人工乾燥はなかなか思うように進捗していないという実態がある。

林野庁の公表した数字で示すと、国内の製材工場から出荷される製品のうち、人工乾燥されたもの(含水率25%以下)は、全体の11%に止まっている。

 そこで、スギの需要拡大策については、スギの人工乾燥化とともにスギの集成材化も視野に入れた取組みが必要であると考える。
なるほど現状では、ホワイトウッド集成管柱よりもスギの集成管柱の製造コストが高く、これがスギの集成材化事業展開の大きな阻害条件になっていることは重々承知している。 しかし敢えて私たちが、現在、スギ集成材の提言をする 積極的な理由は次のようなものである。

(1)

製造コストの格差を販売方法の工夫によって解消することが可能である。

 例えば、林野庁の補助事業を活用して設置した「三陸木材高次加工協同組合」(岩手県住田町)の施設は、2シフト(一部3シフト)で1日40立方メートルのスギ集成管柱(一部通柱)を生産しており、今後、さらに事業の拡大とコト低減に取り組むべく鋭意努力している。

その販売方法をみると、同じく林 野庁の補助事業で設置した「けせんプレカット事業協同組合」と連携して、仙台市にある中堅地域ビルダーへ、材工パック(部材に大工による建方をセ ットにして販売)、P&P(ポスト&パネル)、金具締工法などを利用して販 売している。

このため取引先のビルダーは、ホワイトウッドよりも高いスギ集成管柱を購入しても、自社の営業活動に専念できるというメリットを享受しており、数年前からホワイトウッドからスギに切り換えている。

つまりホワイトウッド集成管柱との単価の競争ではなく、付加価値を加えて顔の見える相手と取引しており、独自のスギ・ビジネスと評価できる。

 このような「三陸木材高次加工協同組合」の取組みは、他県の林業・木材 関係者の注目を浴び、鹿児島県では既にスギ集成管柱生産が開始(林野庁の 補助事業を活用)しているし、秋田県、三重県、熊本県、宮崎県などでもスギ集成材事業が計画されていると聞いている。関係者間でスギの集成材化に対する関心が急速に高まりつつあることを示している。

 現在のスギとホワイトウッドの集成管柱を使用した場合の木造住宅1戸当たり価格差は5万円程度であるが、今後のスギ集成材生産者によるコスト低減努力の実現可能性を考慮すると、価格差は縮小するものと考えられ、今がスギ集成材化のビジネスチャンスともいえる。

(2)

さらに、スギの需要拡大のための1つの突破口として、私たちは「品確法」の住宅性能表示制度、特に「劣化の軽減に関する項目」に注目している。それを簡単に述べると、外壁に通気層を設けた構造にした場合、「劣化の軽減」 で最高ランクの等級3を得るには、薬剤処理を行わない場合には、スプルース(ホワイトウッド)では13.5p角以上が求められるのに対して、スギは12 p角で対応可能だという点である。即ち、品質の劣化においてはスギの方が上と評価されており、ここにスギのシェア拡大の糸口を求めたい。

 この視点に立ち、従来使用していたホワイトウッドからスギ12p角へ全面的に転換した住宅建設企業も現れており、こうした企業にスギ集成管柱を供給しているのが先述の三陸木材高次加工協同組合である。

(3)

もう1つは、為替相場で円安の動向が出てきたことである。

昨年11月以降の円安により、わが国の木材市場の実質的なプライスリーダーである外材の 供給コストが上昇することは十分に考えられる。1ドル=130円水準が続けば、スギ集成材事業にとってもプラスの条件になると考えられる。

 ホワイトウッドを原料とする集成管柱生産は、絶えず為替相場の変動というリスクを背負っているが、スギの場合は、原料価格に大きな変動がなければ、コストダウンによって量産化は可能であると思われる。

(4)

先述のように、長引く不況によって木造住宅の着工戸数が減少しているが、増改築の潜在的需要は確実に存在していると考えられる。

例えば、三和総合研究所が公表した『住宅需要の中期展望』では、 「これまで住宅マーケット においては、住宅新設の重要性が 高かったわけだが、これからはすでにある住宅ストックに関連した市場が拡大してくるであろう。具体的には、中古住宅市場や増改築市場があげられる。

…中古住宅流通が拡大するためには、住宅ストックの価値が維持されなければいけないが、これは増改築ニーズを拡大させる」と予測している。1980年以前の木造住宅を増改築の対象とすれば、現在の木造住宅(約2,400万戸)の57%がこれに該当する。

 この潜在的需要、例えば、1戸建の改築をしたい、1戸建住まいの世帯は さらにグレードの高い家に住みたいといった需要の掘り起こしもスギ集成材 の需要拡大と関わって大きな意味をもってくると考えられる。


3 展望−スギスギ集成材事業の方向−
 以上を踏まえ、日本林業経営者協会はスギ集成材事業の方向について次のような提言をする。

(1) 「品確法」の住宅性能表示制度の「劣化の軽減に関する項目」に関連したスギの優位性や日本の風土に育まれたスギの利用は、環境保全、山村の維持等にも寄与することなどについての理解が高まるよう普及・啓発活動を更に積極的に推進されたい。
(2) いろいろな条件下における対腐食性(耐用性)に関して、スギとホワイトウッドとの比較における実証的な調査・研究を早急に実施されたい。
(3) モデル事業などを利用したスギ集成材化事業への支援として、当面全国10ヶ所、年間50万本生産規模の工場を設立することを推進されたい。同時に、スギ集成材化事業を担う人材を育成する施策を講じられたい。その際の事業 主体は森林組合に限定することなく、スギ集成材化に積極的に取組む事業体にも措定されることを期待する。
(4) スギ集成材化事業にとって、コスト縮減や安定操業の維持は大きな課題であることから、集成材生産者とスギ素材やラミナを供給する事業体(素材生産事業体や製材工場)との原木や均質なラミナの安定供給システム及び製品流通・工務店・住宅メーカーとの製品の長期予約売買契約システムの構築などについての仕組みを創設する施策の実施を要望する。
(5) スギ集成材の特性を生かした住宅工法の開発やスギ集成材を活用した公共施設の建設への支援のほか、地域材を利用して作られたスギ集成材を使用する住宅を建設した場合の優遇措置を創設・拡充(例えば、スギ集成材を使用した場合、需要サイドである工務店ないし住宅発注者に対して、なんらかの還元をする仕組の創設など)する施策の実施を要望する。
(6) 国産材のヒノキ、カラマツ等の需要拡大も緊急の課題であり、これらの集成材化事業について、スギと同様の対応を要請する。
 
 もとより、こうした措置については、林野庁の単独施策では限界もあると考えられるので、地域材利用推進の観点から、国土交通省等の他の省庁や地方自治体などと協調した取組みを積極的に展開するよう要請する次第である。


(参考) 国産材需要拡大分科会構成メンバー
森林総合研究所 林業経営・政策研究領域チーム長 遠藤 日雄 氏
全国木材組合連合会 常務理事 角谷 宏二 氏
日本住宅・木材技術センター 情報業務部長 小柳 好弘 氏
日刊木材新聞 取締役  岡 智 氏
ナイス株式会社 集成材営業部長 的場 幹夫 氏
地方自治体 秋田県 参事 青山 貞紀 氏
同 宮崎県 林務部長 上河 潔 氏
日本林業経営者協会 分科会座長 古河 久純 氏
 
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