今年度活動方針

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活動方針

林経協では、持続可能で環境保全に配慮された森林の管理・経営を推進し、日本の森林・林業の発展・農山村の活性化に寄与することを目的として、森林政策等についての提言とそれを実現させるための運動、調査研究、経営講座の開催、国内外への調査研修、機関誌(林経協季報『杣径』)や書籍の発行などの活動を行っています。
例年、5月に開催される総会で次の活動目的に沿った事業計画を決定し、分科会や青年部会、婦人部会、流通・需要拡大部会などでの活動を行っています。
また、毎年3回開催される理事会でも活動状況を審議しています。
 
<活動目的及び実施事業>
水源涵養、国土保全など環境保全機能を高める森林の管理・経営の推進
持続的な林産物の生産機能を高める管理・経営の推進
森林の自然生態系、生物多様性を維持する管理・経営の推進
森林・林業を通じた農山村地域の活性化
環境負荷の少ない循環資源である国産材の利用推進
森林、林業、木材利用の普及啓発
林業労働安全の確保と従事者の生活環境の向上
森林育成、素材生産、木材加工流通、金融・税制等に関する調査研究
上記各事業に関する研修会、機関紙の発行、関係図書の出版
その他本協会の目的を達成するために必要な事業

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令和5年度事業計画

令和5年5月22日に開催した総会及び理事会において、定款第3条(目的)及び第4条(事業)に基づき、令和5年度は主に以下の活動を行うことを決定。

令和5年度活動方針 (吉川重幹会長)

2020年の冬から世界的にまん延した新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種や感染により免疫を持つ人が増え、死亡率が低下したことなどから、本年5月に世界保健機関(WHO)では緊急事態宣言を終了すると発表、我が国においても新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられるなど、本格的に感染予防と正常な社会経済活動の両立を目指す段階に入った。
しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻等の影響もあり、IMFが本年4月11日に公表した「世界経済見通し」においては、世界経済の成長率(実質GDP伸び率)は、2022年の3.4%から、2023年に2.8%へ鈍化し、2024年には3.0%に回復すると予測されている。さらに急速な政策金利上昇の副作用として金融部門の混乱による先行き不透明感は高く、リスクは確実に下振れ方向に傾いていると警鐘を鳴らしている。
一方、我が国の森林は、昭和20年代以降に造成された人工林資源を主体に充実しつつあり、地球温暖化の進行や豪雨災害が頻発する中で、二酸化炭素の吸収・固定や山地災害の防止などの森林の公益的機能に対する国民の期待は高まっている。特に、2015年に国連サミットで採択されたSDGsの目標の達成や2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するためにも、森林を適正に保全管理することが不可欠となっている。
また、一昨年のウッドショックやロシアのウクライナ侵攻という予測不能な事態の発生や円安基調が続く中で、木材の安定的な供給源として国産材は再評価されつつあり、これまで主として外材が利用されていた羽柄材や集成材等の国産材への転換、非住宅分野の民間建築物への積極的な利用が期待されている。
しかしながら、林業を営む山元の立木価格は依然として低迷したままであり、我が国の林業は採算が合わない状態が長く続いている。この結果ここ数年は主伐に伴う伐採量は増加したものの、その跡地の多くは造林されない状態になっており、森林の多面的機能の低下が懸念される状況となっている。
このような中で、我が国において持続的な林業経営を確立することが喫緊の課題であり、山元の森林所有者が主伐に伴う収益を確保し、造林意欲を喚起することが不可欠となっている。このためには、伐採から造林・育林に係る森林施業について徹底的なコスト引き下げを進めるとともに、林業経営を維持するために必要な木材価格のあり方について関係者間で再確認し、国民の理解と協力を得ることが必要となっている。また、林業経営を支える一つの手段として、J-クレジット制度を活用した民間企業等からの経営支援の充実、強化を図ることも重要となっている。
さらに山林所有者個々の努力のみでは解決が難しい林業制度上の課題、税制問題、国産材とりわけA材の需要拡大については、林業政策に関わる政党関係者、行政機関、更には国民各層との連携を強化し、効果的な政策や取組を打ち出すことが必要となっている。
これまで当協会は、「林業を活力ある産業として蘇らせ、もって国土の3分の2を占める森林を守り、地域を活性化させる」という課題を国民共通の目標にすべく活動してきた。今後より一層、無垢材等の需要拡大による山元立木価格の上昇、育林コスト・伐出コスト・造林コストの低減による再造林が可能な経済条件の整備等に取り組むなど、持続可能な林業経営の実現を目指し活動を展開していくこととする。
このため、本年度の活動として、
1.林業政策に関する情報をいち早く入手し、会員に迅速に伝達すること。
2.部会構成を見直し、政策PR部会、金融税制部会、コスト低減部会、獣害対策部会、優良材等需要開発部会、木質エネルギー等利用部会、木製品等輸出部会の7部会を設置し、それぞれのテーマに応じて調査研究を進めること。特に税制問題や森林の有する機能の外部経済評価への支援策について検討を進めること。
3.毎月の定例会には、講師を招き研修会を開催すること。
4.日本林業協会等と連携しながら、予算、税制改正に向けた要望活動を実施するとともに、持続的な林業経営の確立に向けた林業政策を求める提言や実現のための活動を展開すること。
5.海外も含め林業視察研修を企画し、実行すること。
6.季刊誌「杣径」を発行し、最新の森林、林業、木材産業に関する知識や情報を共有すること。
7.青年部会がとりまとめた提言についての対応策の検討を進めるとともに、林業経営後継者の育成に取組を加速化すること。
8.当協会の収支改善に向けて、令和4年度に引き続き、調査、受託事業の実施、杣径等の書籍販売の拡大、新規入会者の受入等に積極的に取り組み、収入の増大を図ること。
について、新型コロナウイルスの感染状況に留意しながら、計画的かつ着実に取り組むこととする。
加えて、国産材とりわけA材(無垢材)のより一層の利用拡大に結びつけていくための方策や持続的な林業経営に必要な木材価格のあり方やその実現に向けては、関係団体等との連携を図りながら活動することとする。
各部会については、林業政策や林業技術のみならず、国際情勢の変化、急速に進歩するIT技術等に関する最新の情報を収集しながら、それぞれ具体的なテーマを取り上げ、調査・研究を進める。
このほか、個々の会員が抱える林業経営上の課題、相続や税制上の問題、後継者育成等の個別の課題解決についても、会員相互の協力を得ながら積極的に対応する。
なお、各部会の方針は次のとおりである。

部会活動方針

政策課題に関する部会は、次の7部会となっている。
①  政策PR部会(担当:徳川斉正副会長)
②  金融・税制部会(担当:辻村百樹副会長)
③  コスト低減部会(担当:佐藤重昭副会長)
④  獣害対策部会(担当:原直道副会長)
⑤  優良材等需要開発部会(担当:西川政伸副会長)
⑥  木製品等輸出部会(担当:田中俊彦副会長)
⑦  木質エネルギー等利用部会(担当:溝渕真一副会長)
 
① 政策PR部会(徳川斉正副会長)
2020年以来のコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻により、激変する世界情勢下で、林業を取り巻く状況も世界的規模での構造変化が予想される。
このため、我が国のみならず海外の林業政策等の情報収集に努め、会員へ迅速に伝達するとともに、会員相互の意見交換の機会を拡大する。
一方、山元の存在感を高めて収益拡大につなげる為に、林経協会員の活動が、国土強靭化や地域環境の保全、地方創生、健康増進など、我が国の根幹形成を図る上で極めて重要かつ有効な役割を果たしていることを積極的に発信する。
また、クリーンウッド法の改正など、林業経営に影響の及ぼす政策については、直接、政策担当者から説明を受け意見交換できる機会を増やしたい。
このほか、衆議院議員選挙の有無について、情報収集に努めながら的確に対応することとし、林政会と連携しながら、林業関係議員へのロビー活動等を積極的に進める。
 
② 金融・税制部会(辻村百樹副会長)
国土の強靭化や環境対策の極めて重要な一翼を担う林業を持続発展させる上で、当会会員の果たす林業経営の役割は極めて重要である。次世代へ優良な山林を継承するためには、持続可能な経済基盤の確立が必須であり、金融や税制への理解促進と適切な対応が不可欠となる。
新年度より金融・税制部会を新設して、最新の金融や税制の情報を収集するとともに、専門知識を持った学識経験者からの説明を受ける機会を設けたい。
また、林業経営特有の固定資産税や相続に関わる諸課題について、会員からの問題提起や意見集約、担当機関との意見交換を行い、会員間の情報共有を図るとともに、林政会との連携を密にしながら、金融税制課題についても林業関係議員へのロビー活動を計画的に進める。
さらに林業税制問題について、固定資産税や林地評価の現状について意見交換する機会を設けるほか、林業税制の分かり易い解説本の作成について取り組みたい。
ここのほか、カーボンニュートラルの実現に向けて重要性が高まっている森林クレジットやGX(グリーントランスフォーメーション)を巡る最新の動向等の情報収集、共有化に取り組む。
 
③ コスト低減部会(佐藤重昭副会長)
持続的な林業経営を確立する上で、造林から伐採搬出に至る施業の低コスト化を図ることは一つの大きな柱となっている。このため、造林・育林技術、路網整備、林業機械、労働安全、林業技術者の育成など取り組むべき課題は多岐に亘るため、定例会後の部会、現地検討会、杣径の特集等を通じて、適時適切な情報の共有を図りたい。
また、スマート林業については、精密森林情報に基づく路網整備とデジタルトランスフォーメーションの構築、ドローン荷役、林業用アシストスーツ、自動伐木作業車、自動集材機、無人自動走行フォワーダーなど国内外の実用化に向けた進展状況の調査・研究を進めたい。
 
④ 獣害対策部会(原直道副会長)
全国的に被害が深刻化しているシカ及びクマによる森林被害の現状とその効果的な被害対策技術について、最新の知見や取組事例等の情報収集、検証を進めるとともに、国有林等と連携しながら地域一体となった効果的な対策方法について検討を進めたい。
このほか、近年、寒冷地へ被害が拡大しているナラ枯れ病等の病虫獣害について、現状の把握と効果的な対策手法(枯死する前に利用する。)について研究を進める。
 
⑤ 優良材等需要開発部会(西川政伸副会長)
ウッドショックにより国産材価格も一時的に上昇したが、新型コロナウィルス感染状況の落ち着きとともにウッドショック前の価格に下落し、日本市場の脆弱性や国産材の国際競争力不足が明らかになった。海外の需給状況に大きく左右されないためには、国産材の需要拡大を更に進めるとともに木材自給率を高め、強固なサプライチェーンを構築し山元にも適正な利益が還元されるように立木価格を是正していく必要がある。
また、建築物に木材を利用することは、二酸化炭素の排出削減や2050年のカーボンニュートラル実現にも貢献することから、木造率の低い非住宅・中高層建築物での木造・木質化の新たな取り組みについて引き続き最新の情報収集と発信に取り組む。さらに今後、大径材の出材量の増加が見込まれる中で、大径材の利用拡大に向けた新たな活用策などについて幅広く情報収集とその共有に取り組む。
このほか、川下の木材利用者サイドの新たな動き、新規用途の開発状況、具体的な市況や需要動向の変化について定期的に会員へ情報提供する。
 
⑥ 木製品等輸出部会(田中俊彦副会長)
原木輸出については、6年続けて100万㎥を超えているが、昨年は製材輸出が17万㎥と前年より約4万㎥減少している。海外需要が低調、不透明な中で、特に付加価値の高い木製品等の輸出に向けた最新情報の収集と共有を行いたい。
また、今後の原木輸出の展望や付加価値のある木材製品輸出の現状等をテーマとした講演会を検討したい。
 
⑦ 木質エネルギー等利用部会(溝渕真一副会長)
農山村地域の振興に貢献する小規模な木質バイオマス利用施設の実態とこれに対する国、地方の支援策の調査分析を進めたい。特に、今年度は新型コロナウイルスにより活動が制約され実行できなかった、小規模な木質バイオマス発電施設等の事例を視察し、具体的な活用方法と改善すべき課題を調査するほか、先進的に小規模バイオマス発電等に取り組んでいる自治体又は企業等から説明を聞き意見交換する機会を設けたい。
世界的に脱炭素化に向けた取組が進む中で、木質バイオマス利用は、発電の安定性の面から風力・太陽光発電と比較しても更なる発展の可能性があると考え、木質バイオマス利用がより効果的に林業経営の収益安定に寄与する仕組みの研究を進める。
また、里山広葉樹林の熱利用を含めた活用策について、昨年度に引き続き調査、研究する機会を設けるとともに、里山林の利用に実践的に取り組んでいる事業者等との交流を深めながら連携方策を検討する。
このほか、木材のマテリアル利用以外の技術開発の動向、特に木質成分を利用した新たな製品開発の取組状況や林業経営に及ぼす効果等の研究を進めたい。

青年部会・婦人部会活動方針

これまで同様に一般会員にも参加を呼びかけて、両部会主催でのセミナーや研修視察等を実施する。

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